生前贈与に関する契約書がない場合の対処法
1 契約書がないとどのようなリスクがあるか
相続税対策を行ううえで、最もメジャーな生前贈与の対策の一つが、110万円ずつ毎年家族に贈与するというやり方です。
これは、立派な相続税対策となりますが、「贈与」を否認されてしまうと相続税の課税対象となってしまうことには注意が必要です。
生前贈与に関する契約書がない場合、「贈与」を否認され、あくまでも亡くなった方の財産だから相続税の課税対象となると指摘をされてしまい、追徴課税の対象となりうるリスクがあります。
2 契約書がない場合の対処法
⑴ 契約書がないと何が証明できないか
贈与は、あくまで贈与者の贈与の意思と受贈者のもらう意思の合致によって成立します。
契約書がないと、これらの意思の合致を証明できない点が問題です。
ただ、契約書以外の方法で贈与の意思ともらう意思の合致を推認できれば、贈与の成立を認めることができます。
⑵ 子どもや孫名義の通帳に振り込んでいる場合
その通帳を親が亡くなるまで管理している、子どもや孫が自分の名義であるにもかかわらず通帳の存在を知らなかった、暗証番号を知らない、子どもや孫名義の通帳には親から一方的に振込の履歴だけがあり一切使用されていない・・・これらはいずれも、贈与の成立を否認する方向に働く事実です。
贈与の典型的な例は「お年玉」ですが、お年玉はもらった子が自由に使うことができます。
上記の例は、いずれも名義人となっている子どもや孫が自由に使うことができないため、本当にあげる側に贈与の意思があったのかということを疑わせます。
また、もらう側にももらう意思があったのかということを疑わせる事実となります。
逆に、子どもや孫名義の通帳へ親から振込があり、その後、子どもや孫がその口座から家賃や光熱費、日常生活費や学費などを支払うなどしている場合は、もらったお金をもらっている側が自由に使っていることから、贈与側には確かに贈与の意思があり、もらう側にももらう意思があったことを推認される事実があったといえます。